山形村短角牛の1年 | 山形村短角牛公式オンラインショップ

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2020/10/05 17:04

 山形村短角牛は、農耕や荷役に使われた「南部あか牛」をルーツに持ち、「夏山冬里」と呼ばれる伝統的な方法で育てられています。

岩手県の県北に”やませ”と呼ばれる冷たく湿った風が太平洋から吹き始める5月、牛たちは標高500m~800m程の丘陵地帯を切り開いた放牧地に「山上げ」されます。牛たちはここで牧草を食べたり木陰で休んだりのびのびと成長していきます。
 冷害をもたらす”やませ”は作物の育成には不向きとされていますが、暑さを嫌う牛たちにとってはストレスフリーな環境となっています。そこに、山形村短角牛の特徴である”上質の赤身肉”の秘密が隠されています。

 山形村短角牛の特徴でもある繁殖は、優れた血統の雄牛を50頭程の雌牛の群れに放ち自然交配にまかせる「まき牛」と呼ばれる伝統的な方法を守っています。これは、ほとんどが人工授精で誕生する黒毛和牛と明らかに違っている点です。決して効率が良いとは言えないこの繁殖方法ですが、自然の中で育まれた”いのち”を頂くことの意味を深く考え、長年向き合ってきた生産者の方々の”想い”がそこにあります。
 我が子同然の牛たちを厳しい自然環境に置く生産者は、定期的に放牧地へ赴き健康状態の確認をおこないます。そこでは、広大な放牧地で牛たちを1カ所に追い込む作業が行われます。牛が集まると脱走した牛はいないか、体調を崩した牛はいないか、1頭1頭丁寧に確認していきます。こうした作業が数カ所ある放牧地で日々行われています。

 久慈渓流が紅葉を始め、秋も深まり始める10月には夏の間に成長した牛たちが牛舎に戻る「山下げ」が行われます。夏には放牧地で牧草を食べていた牛たちですが、牛舎へ戻るとデントコーンサイレージと呼ばれる飼料用トウモロコシを発酵させたものを主食とします。遺伝子組み換えをされていない厳選された国産飼料にこだわり続けることで「安心安全な山形村短角牛」を皆様にお届けすることができます。
 牛たちは牛舎に戻ると、夏の間に妊娠した雌牛たちが出産を迎えます。出産は自然分娩で、夏の間に山間部の丘陵地帯で足腰を丈夫に鍛えてきた母牛たちは比較的安産が多いです。出産のピークは2月、ー10℃を超える牛舎の中で新たな生命が生まれる瞬間は、何度見ても神秘的で無事に生まれてきた仔牛を見たときはとても安心するそうです。

 山形村短角牛のもう一つの姿が「闘牛」です。闘牛と言われてイメージするのは、派手な衣装に身を包んだマタドールが赤い布を持って牛の突進を華麗に避ける姿だと思いますが、ここ山形町では違います。その昔、「塩の道」と呼ばれる街道を通り沿岸で生産された貴重品の塩を内陸の盛岡まで運んだとされる「南部あか牛」が山形村短角牛のルーツです。この荷役に使われた牛たちは一番強いものについて歩く習性があり、ツノ突きをさせてその先頭を決めていたそうです。その伝統が今でも継承され、普段は温厚な短角牛が一転激しくツノを突き合わせる平庭闘牛大会が毎年開催されています。牛同士の戦いに決着をつけないことも特徴で、平庭でデビュー戦を飾った闘牛達は新潟県の山古志や鹿児島県の徳之島などへ渡り活躍をしています。

 雪が降り積もる東北の厳しい冬が過ぎ、新緑が目にまぶしくなる頃「山上げ」の季節がまたやってきます。こうして紡がれてきた伝統と生産者の牛に対するまっすぐな気持ちが山形村短角牛の”良質な赤身肉”を生み出しているのです。